不登校のすべて:不登校からの進学、進路、学校選び
おすすめの不登校支援の学校
いじめ、不登校、中退などで進路が閉ざされている子供達に、元気に通える場を提供します。
「個室」での「1対1の個人指導」で、通信制高校の課題を学習します。
必修授業は月〜金曜日、9:00〜12:30まで。ゆとりある時間割で、自分の時間が作れます。
安心して通える学校生活の場を提供する目的で23年前に設立されました。
普通科では高等専修学校の卒業資格はもちろんのこと、高卒資格も同時に取得可能です。
「支え合い、学び合い、高め合う」をモットーに、生徒一人ひとりの心と個性を見つめます。
今は休養が必要な時期
挽回のチャンスはいくらでもある
斎藤 環さん(精神科医)
不登校、ひきこもりについて多くの著書がある斎藤先生は、不登校、ひきこもりが、子供たちを置き去りにし、各立場の道具にされていることに強い危惧を抱いているとおっしゃいます。本当に子供たちのためになるサポートとはどんなものなのか、精神科医の立場でお答えいただきました。今のつらさは
ずっと続くものじゃない
――先生の著書のなかでも触れられていますが、子供たちの世界の中で特にコミュニケーション能力のあるなしが重視されすぎているように感じます。「KY(空気読めない)」といった言葉が流行り、空気が読めないとなると急に集団から阻害されるような傾向が、学校になじめない子供をよけいに苦しめているように感じますが。
そうですね、私たちが子供のころというのは、勉強ができる、スポーツができる、絵がうまい、などさまざまな面で評価がされ、それによって一目置かれる、ということがあったのですが、今は子供社会だけでなく、どの社会でも評価の基準がコミュニケーション能力のあるなしに特化されすぎていると思います。しかも子供の場合、「空気を読まない行動をとる」となると、すぐに「発達障害ではないか」という話になってしまう。周囲の感性が貧しいんです。思春期特有の感じ方なんですが、今、苦しいと、それが一生続くように思ってしまう。そんなことはないです。
ゴールは、子供自身が
元気になること
――親御さんの多くが、不登校になったお子さんを「そっとしておくのか、何かを促したほうがいいのか」ということで迷われるようです。
不登校の問題は、’80年代前半まで、「不登校は良くない、学校に戻すべし」という考えが主流で、入院治療の対象となっており、合法的な行為ではあったのですが、大きな批判を浴びることになりました。私自身も師匠が治療に携わっていたので人ごとではないのですが、タッチの差で医師としてその行為に携わらずにすみました。それから子供の権利を守る立場でフリースクールができ、そこが起点となり、子供の立場に立って考えようとする、いわゆるハト派が生まれます。
1992年に、当時の文部省から「不登校は誰にでも起こり得る」という主張と、「不必要な登校刺激を避ける」という主張が出てきた。するとその言葉が、周囲に何もしないことの口実を与えてしまった。これは2003年に見直しがあって、私が調査研究者協力者会議のメンバーとして真っ先に主張したのが「『登校刺激の禁止』という教条を取り除いてほしい」ということでした。登校刺激がいいか悪いかは関わってみなければわからない。関わりのあとで結果が見えてくるわけですから。登校刺激についてはその後修正が行われました。
私は、極論に走ってしまってはいけないと思います。強制も良くないし、放っておくのも良くない。ところが、現状は、どちらがいいかという論争から、タカ派とハト派の代理戦争のようになってしまっています。
私が言っているのは、ゴールの設定が間違っているということ。ゴールは「再登校」ではないということですね。これは私のオリジナルではなく、ある臨床心理士の先生がおっしゃっていたことですが、目標設定は「再登校」でなく「どうすれば元気になるか」なんです。元気になることには誰も異論がないわけですから。
見守ってあげる
一緒に手探りしていく
問題は、その元気にする方法論が全然ないということ。ケースバイケースなんです。不登校を、あえて精神疾患として見た場合は、病気の度合いが非常に軽い。不登校の子供たちというのは多様な集団で、私は分類にすら反対です。怠けているように見えた子が、実は葛藤していたりする。絶対にはずしてはいけないのが、関わり続けること。関わる中でお互い手探りをし続けるしかない。だから、これは専門家にあるまじき発言かもしれませんが、不登校の治療というのはないんです。
関わってみなければ、どの子がどの方法で解放されるのかはわからない。ある種の子供は転校するだけで元気になる。元の学校に戻って元気になる場合もある。だから、見守ってあげることが大切です。
本人はぎりぎりまで頑張って、行きたくても行けない状態ですから、ひとまず休養させてあげましょう。お母さんには不安が大きいと思います。でも、何か事情があって学校に行けないのだと思ってあげて欲しい。何があったのか、なぜ学校に行かないのかを知りたくても、それを問い詰めると、学校にも居場所がないのに、家でも居場所がなくなってしまう。追い詰めず、まずは休養させる。親子関係を取り戻すにはある一定の期間が必要です。その間、おだやかに見守り、何か話したくなったときに話せるように、会話を多くする。ちょっとした外出ができれば気晴らしに買い物に出るのもいいでしょう。
近所がいやなら旅行に出かけてもいいでしょう。一緒に手探りしていこうという気持ちで見守っているうちに、子供の方から、実はこういう道に進みたいなどと話してくるかもしれません。そのためには、お母さん、お父さんが、自らの過ちを認める姿勢があるといいですね。
自らの過ちを認める姿勢が
あると、解決が早い
――親として過ちに気づき反省するには、価値観をも変えなければならないことがあります。これは簡単ではないと思います。親だけでも第三者に相談し、助けてもらうことも大事なのではないでしょうか。
勘のいい人は、自分で気づきますから、自己流でもいい。お母さんが落ち込んだりせずに楽観的に考えられたらいいと思います。お母さんが楽だと、子供も楽なんです。
不登校、ひきこもりを経験した子には能力の高い人が多い。きっと挽回のチャンスはあります。今は十分に休養をして、力を蓄えましょう。
プロフィール
斎藤 環(さいとう・たまき)。1961年生まれ。筑波大学医学専門群(環境生態学)卒。医学博士。思春期・青年期の精神病理、病跡学を専門とする。現在、爽風会佐々木病院に勤務。著書に『社会的ひきこもり』『「ひきこもり」救出マニュアル』(PHP新書)『「負けた」教の信者たち』(中公新書ラクレ)ほか多数。